きっとそれは杞憂なのだと思いたかった。だが、俺の身体の奥底で眠る本能ってやつは
それを許してはくれない。常日頃からそれを認めろと急かし、促してくる。そして自分自身もその
真実に気づき始めていた。いや、とっくに気づいていたのかもしれない。





「・・・いい加減自覚しろってか?」





自嘲気味に呟いた言葉が頭の中で何度も木霊してしつこく付きまとう。
あーうざい、うざすぎるよ俺。深く吐き出された息はじめじめと周囲をしばらく漂ってから
静かに宙の中へ消えていく。そしてまた、ひとつ。



立ちあがる。軽くあたりを見渡してから、接客用のソファーに腰かけた。
ここから見る自分の仕事机は何故だか普段とは違う雰囲気をかもし出していて面白いと思った。









「・・・あいつは、」







ただの仕事仲間だ、と言いかけて止める。なんとなく言葉にしたくなかった。言ってしまったら
本当にそうなってしまうんじゃないかと思って、不安だった。












ん?

不安?俺が?なんで。
別に銀さんはあんな子に興味もないし、好みのタイプでもない。
あんなの別にすきじゃ・・・・・













―――ふと、我に返る。遠くから街道の騒めく音が聞こえた。















その言葉は言ってはいけない、俺の中の真実ではない、偽りだ。















「・・・っ、はぁぁぁーーーーー」








全く進歩しない自分の思考回路に半ば嫌気がさしてきて、気がつけばまた、深くため息を
零していた。さっき言ったばかりじゃねぇか『いい加減自覚しろ』と。





そう、いい加減認めるべきなのだ。






初めはただの阿呆でどんくさい女。それだけだった。またとんでもねぇのが入ったと。
けど、意外と作る料理は上手かった。道端に咲いてる花を見つけては微笑むような奴だった。
っていうか笑った顔すげぇ可愛いんだよ。
怒ると頬を真っ赤に染めて必ず下のババアんとこに逃げ出していた。
どんなに辛いことがあっても無理して笑って、陰でこそこそ涙を流すようなやつだった。

こいつのことを知れば知るほどに、ひとつ、またひとつと惹かれていった。
そして気がつけば、・・・・・・・・・。







年齢が離れてるとか、男は永遠に独身なんだ、とか適当に理由をつけては自分に歯止めを
かけていた。その先に行っては駄目なのだと己を制御していた。



けど、だけど。







『いい加減、自覚しろ』







もう、限界なのかもしれない。



















「―――・・・すきだ、」










一度溢れ出した想いはもう元には戻れない。
止めることは、できないんだ。













「好きだ好きだすきだ好きだ好きだすきだすきだ好きだ好きだ好きだすきだ好きだ好きだ
すきだすきだすきだすきだすきだ好きだ好き、だ・・・」










悲痛にも近い声で叫ぶ。誰かに聞いてもらいたかったわけではない。
ただ。止まらなかっただけのこと。言葉が、想いが溢れかえっただけのこと。









「・・・はぁ」





もう何度目かもわからないため息を。だけどさっきまでとは明かに違うものだった。
何かを吹っ切ったような、そんな感じ。自分の天パを指でいじりながら遠くを見つめた。


今日はこれからあいつがここへ来ることになっている。





「よっしゃ」





天井を仰ぎ、軽く息を吐きながら瞳を閉じた。ゆっくりと、ゆっくりと思い浮かべるあいつの姿。
愛くるしい笑顔、俺を呼ぶ声。・・・・・・よし、大丈夫だ。気合い入れのために頬を数回叩く。
自分で言うのもあれなのだが、こう見えても俺は結構行動派な人間なのだ。・・・そのわりには
ここまでくるのにえらい時間がかかったけどな。いいんだ。もう、迷わねぇから。





「・・・準備はできましたよ」




この部屋の扉が開いたら、あの愛しい声が耳に響いたら、俺はきっと前進できる。
そんな気がしてならなくて、俺は知らないうちに口元を緩ませていた。

































好きだよ、




end
06/09/11 kon

はつたんぺんです。
えぇ、自分でもわかってます。異色だって
独白じゃん!!夢じゃないじゃん!!
でも、こういうのもいいかなっておもったんです。
タイトルは難産です・・・
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送